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大野市   越前若狭ふるさとリポート  
  大野市 〜水、物、人が
やさしく触れ合うまちを目指して〜
大野市
  水循環共生都市おおの    
 
「名水のまち 大野」
陸対型イトヨ
陸封型イトヨ

 大野市は豊かな地下水に恵まれたまちで、環境庁の名水百選にも選ばれている「御清水(おしょうず)」をはじめとして市内各地に清らかな水の湧き出る清水(しょうず)が存在しています。中でも湧水池「本願清水」は全国でも珍しい陸封型イトヨ生息地の南限として昭和9年5月1日に国の天然記念物に指定されています。イトヨは本来、海水域と淡水域を往復する魚ですが、淡水域のみで生活する珍しい陸封型(淡水型)もいます。この陸封型イトヨの生息には、水温が15℃前後で安定し水量が豊富な湧水池が不可欠であり、日本では3カ所が知られるだけです。イトヨにはトゲがあり、オスは婚姻色に身を染め、巣作りを行ってジグザグダンスでメスに求愛し子育てをするなど、生態学的にも興味深い魚です。
 また、大野市では、今でも市街地の家庭の大部分が地下水を生活用水として使用しており、地下水は市民の生活と切り離すことのできないものとなっています。

 
イトヨと共に生きる
本願清水イトヨの里
本願清水イトヨの里
館内からイトヨの住む水中を観察できる
館内からイトヨの住む水中を観察できる

 大野市には古くからたくさんのイトヨが生活水として利用されてきた清水と共存しており、「ハリシン」と呼ばれ親しまれてきましたが、地下水位の低下などにより、その数は極めて少なくなってしまいました。しかし、大野の水環境が変化する中、市民の意識も高まり、イトヨや地下水を保護しようという動きが起こり、様々な団体が結成され水源地の保護やイトヨの飼育など独自の活動を展開するようになりました。
 そんな中、大野市は平成10年度から3年間かけて、「本願清水イトヨの里」を整備しました。イトヨ生息地である本願清水の整備や観察池など生息環境を整えることに加えて、天然記念物である本願清水を広く公開・活用する学習・研究施設の建設を行いました。イトヨは冷たくてきれいな湧水の豊富なところにしか生息できない魚であることから、水環境のバロメーターと言えます。イトヨの生態や水環境などを学びながら、その大切さを理解してもらい、保護の啓発につなげるとともに、大野の恵まれた水環境や豊かな自然、郷土の文化財などの保全を図ることも目的としています。

 
限りある資源を守る
大野の地下水について
大野の地下水について

 大野市は恵まれた水環境を次世代に残すため、様々な努力を続けています。
 地下構造探査など地下水に関する調査を行うと同時に、市内に地下水位の観測井戸を設置し、約30年にわたり観測を続けています。また、地下水位の低下する冬期間には涵養地帯の水田を借り上げて湛水を行うという対策をとっています。昭和52年に5.5ヘクタールで始めたこの事業は、現在も10ヘクタールの水田を借り上げ実施しています。
平家平ブナ林
平家平ブナ林

 平成8年には、真名川上流に位置する通称「平家平」にある196haのブナ林を取得しました。ブナやミズナラなどの広葉樹林は自然のダムの役割を持ち、地下水の源になっています。また、同地内は自然散策や森林浴など市民の憩いの森としての最小限の整備をするにとどめ、水源の涵養や自然景観の保全に努めています。
地下水位表示板
地下水位表示板

 また、涵養対策と併せて、地下水が市民の共有財産であり、限りある資源であることを理解してもらうための様々な活動を行い、さらなる節水対策を図っています。平成10年に開校した大野明倫館の「環境学科」では、大野市の地下水の流れや水環境の保全について、地下水位調査などの野外観測を交えた授業が行われています。昭和52年に制定した「大野市地下水保全条例」では、大口の地下水採水者は、量水計を設置し採水量を報告することを義務付け、原則として冬季の融雪に地下水を使用することを禁止しています。また、指標としている春日観測井戸で一定水位まで低下すると注意報や警報を発令し、市民に節水を呼びかけます。これらの地下水保全に対する取組みが認められ、大野市は平成13年度環境省アメニティあふれるまちづくり優良地方公共団体表彰を受賞しました。

 

 
今後の課題と展望
名水百選 御清水
名水百選 御清水

 近年、降水量の減少や土地利用の変化など様々な環境の変化により地下水の収支バランスがくずれ、地下水位は低下傾向にあります。また、大野市は豊かな地下水に恵まれていたがゆえに、上下水道の整備が遅れているという課題もあります。今後、この美しい地下水を守り続けていくために、上下水道の整備を進めていくことは不可欠です。本願清水イトヨの里などを通じて、市民一人一人の水に対する意識は着実に高まってきています。今後も大野市民の共有財産である地下水を守り続けていくために、様々な施策を進めていく予定です。

 
大野イトヨの会   中野清水を守る会
 大野の水環境が変化する中、イトヨに関わる市民グループやイトヨに関心を持つ市民がイトヨや水源の保護を行うようになり、一丸となって「大野イトヨの会」を誕生させました。この会では、「イトヨを守る会」「イトヨをふやす会」「イトヨ短歌会」「イトヨーズ」「大野青年会議所」など、様々なグループが独自の活動を展開しながらイトヨを保護し、水の大切さをあらためて見直し、美しい大野の生活環境をこれからも守り続けようと努めています。  
中野清水奉仕作業の様子
中野清水奉仕作業の様子
 かつて中野清水では、蛇行していた木瓜川の一部として清水が湧き出ていました。しかし河川改修で廃川となってからは、生活雑排水が流れ込み、清水の一部が埋め立てられ、ゴミや危険物の捨て場となってしまいました。
 平成8年、下庄地区の壮年グループ「下庄倶楽部」が、自分たちで清水を復元しようと地元の青壮年会に呼びかけ、約40名の有志で清掃作業に取組みました。清水の清掃作業が進むにつれ、あちこちからの地下水の湧出を確認、平成9年に行政が埋め立てられた土砂の撤去や混入する生活雑排水のバイパス工事に着手すると、見事な湧水地に生まれ変わりました。地域活動は清掃奉仕だけにとどまらず、手づくりの看板や橋、ベンチ、花壇などの設置へ発展し、環境に対する意識改革へとつながりました。そして、平成10年、開成中学校の理科クラブが飼育したイトヨを放流しました。これら一連の復元作業により、イトヨの姿が中野清水に多く見られるようになりました。
イトヨ講座の様子
イトヨ講座の様子